徳川家康と豊臣秀長のつながりについて
大河ドラマ「豊臣兄弟！」の徳川家康（松下洸平）とは
2026年のNHK大河ドラマ「豊臣兄弟！」の主人公は、仲野太賀さん扮する「小一郎」こと豊臣秀長（1540~1591年）です。NHKは2025年2月3日にその豊臣秀長・秀吉兄弟に立ちはだかるライバルとして、松下洸平さん扮する徳川家康が登場することを明らかにしています。
徳川家康（1543~1616年）とは、1600（慶長5）年の関ヶ原の戦いにおいて東軍を率いて西軍の石田三成に勝利し、1603（慶長8）年に征夷大将軍に任命され、徳川幕府の基礎を築いた戦国武将です。
大河ドラマ 豊臣兄弟 徳川家康の役柄
大河ドラマ「豊臣兄弟！」の松下洸平さん扮する徳川家康の役柄は以下の通りです。
戦国乱世に終止符を打ち、江戸幕府初代将軍として泰平の世を築いた戦国三英傑の一人。「桶狭間の戦い」で主君の今川義元が信長に討たれたことで、その後の運命が大きく変わることに。信長亡きあと天下一統を狙う豊臣兄弟の眼前に最大最強のライバルとして立ちはだかる。
豊臣秀長と徳川家康にまつわる年表
| 西暦（和暦） | 年齢（満年齢） | 出来事 |
|---|---|---|
| 1543（天文11）年 | 0才 | 三河国岡崎城にて松平広忠・於大夫妻の長男として誕生 |
| 1570（元亀元）年 | 27才 | 朝倉征伐の撤退戦（「金ヶ崎の退き口」）と姉川の戦い |
| 1584（天正12）年 | 41才 | 小牧長久手の戦い。秀吉方と和睦 |
| 1586（天正14）年4月 | 43才 | 秀吉・秀長の妹・あさひ（南明院殿）を正室に迎える。 |
| 1586（天正14）年10月 | 43才 | 大坂で秀長の屋敷に宿泊。翌日、秀吉に謁見し豊臣家への臣従を誓う |
| 1586（天正14）年11月 | 43才 | 秀長と同時に朝廷から正三位に叙せられる |
| 1587（天正15）年8月 | 44才 | 秀長と同時に朝廷から従二位権大納言に叙せられる |
| 1588（天正16）年2月 | 45才 | 秀長に京における屋敷を普請するための助言を仰ぐ |
| 1588（天正16）年6月 | 45才 | 病気の大政所（天瑞院殿）を見舞うためにあさひと共に郡山を訪れる |
| 1590（天正18）年 | 47才 | 小田原征伐に出陣するも秀長は代理として藤堂高虎を派遣。秀長とやり取りする手紙には秀長の病気に関する話題が多くなる |
| 1591年（天正19）年1月 | 48才 | 秀長が病気のために51才で亡くなる |
以降の記事では豊臣秀長と徳川家康にまつわる8つの逸話・エピソードを紹介いたします。
豊臣秀長と徳川家康 参考資料
なお豊臣秀長と藤堂高虎にまつわる今回の記事は以下の資料を参考にしています。
- 柴裕之編著 豊臣秀長 (シリーズ・織豊大名の研究) 戎光祥出版（2024年）
- 堺屋太一 全一冊 豊臣秀長 ある補佐役の生涯 (PHP文庫)
- 大河ドラマ 秀吉（Prime Video）
- 大河ドラマ どうする家康（Prime Video）
これらのうち「豊臣秀長 (シリーズ・織豊大名の研究) 」を編著した柴裕之さんは、NHKの2026年大河ドラマ「豊臣兄弟！」の時代考証を担当されています。
豊臣秀長と徳川家康にまつわる8つのエピソード
1. 朝倉征伐と「金ヶ崎の退き口」同じ戦場にいた秀長と家康
1570（元亀元）年4月、織田信長は朝倉征伐に失敗し、一目散に京へ撤退することを決定。その際に木下秀吉（のちの豊臣秀吉）を殿軍（しんがり）とします。世に言う「金ヶ崎の退き口」です。
殿軍とは撤退戦における味方の最後尾に位置する部隊のことで、敵の追撃を食い止めて味方を逃すという危険な役割を担う部隊のことを指します。
堺屋太一さんの「豊臣秀長 ある補佐役の生涯」では、殿軍の木下隊の中でも最後尾に配置されたのが秀長の部隊であったと描かれています。
一方、2023年に放送されたNHKの大河ドラマ「どうする家康」の14話「金ヶ崎でどうする！」では、徳川家康は木下秀吉とともに殿軍を務めています。
「どうする家康」と「豊臣秀長 ある補佐役の生涯」では、「金ヶ崎の退き口」についての解釈が少し異なりますが、秀吉について朝倉征伐に従軍していた秀長と徳川家康が同じ戦場にいて朝倉義景と浅井長政に追い詰められていたことは、ほぼ間違いないでしょう
2. 小牧長久手の戦い 戦で勝った家康と政治で勝った秀長
1584（天正12）年の羽柴秀吉（のちの豊臣秀吉）と徳川家康・織田信雄の連合軍の間で起こった小牧長久手の戦いでは、徳川家康が比較的優位に戦況を進めます。
しかしその戦況を覆したのは秀長が交渉を務めた織田信雄との単独講和です。しかも秀吉は1585（天正13）年に朝廷から関白宣下を受けたため、家康側には秀吉と戦を続ける理由を失うことに。
小牧長久手の戦いにおいて、徳川家康は秀吉・秀長兄弟に「戦に勝って政治で負けた」のです。
3. 秀長が藤堂高虎を家康に紹介した
1586（天正14）年ごろから、秀吉は徳川家康に対して臣従を誓うよう上洛をするよう促していました。そのため秀吉は秀長に命じ、京における徳川家康の屋敷を造営するよう命じます。
そこで秀長は家康の屋敷を普請するための責任者を、「築城の名手」と言われた藤堂高虎に任せることに。この屋敷が出来上がったのち、家康は高虎に対して感謝の書状を送ることになりました（「豊臣秀長 (シリーズ・織豊大名の研究)」198ページ）。
後年、徳川家康は藤堂高虎に対して江戸城本丸の修築・天守閣の設計・江戸城二の丸の普請など徳川幕府の権威に関わる仕事を依頼します。こうした家康と高虎の「普請つながり」の始まりは、秀長が高虎に命じた徳川家康のための屋敷造りに端を発すると言えるでしょう。
4. 秀長は家康のために屋敷普請のコンサルタントをしていた
徳川家康の京における屋敷普請の話にはまだ続きがあります。徳川家康はこの京における屋敷を普請するために、三河国（現在の愛知県東部地域）の本證寺・勝鬘寺など一向宗を宗旨とする7つの寺に対して材木5,000本を調達するよう命じます。
しかしこれらの各寺はすでに諸役（上納金や労働力提供のこと）がすでに過重になっていることを理由として、家康の命令を拒否。そのことを聞きつけた秀長は、各寺の本山である本願寺の下間頼廉を通して、これらの寺に課されている諸役を免除することを依頼し、家康の材木調達に協力します。
現代風に言えば、秀長は家康のために建築や建設のコンサルタントをしてあげたというところでしょう。
5. 秀長は「家康の接待係」だった
1584（天正12）年の小牧長久手の戦いのあと、秀吉は徳川家康を懐柔するために妹・あさひ（南明院殿）を家康の正室として送り出すことを決意。秀長は当初、この政略結婚には反対だったそうです。
しかし秀長は家康の京における屋敷の造営を担当したのちは、「家康の接待係」と言えるほど徳川家康と交流を重ねています。
「豊臣秀長 (シリーズ・織豊大名の研究)」の199ページから200ページにおいて、1588（天正16）年7月から8月にかけてだけでも、秀長と家康の交流について以下のことがあったと伝えています。
- 7月7日 秀長と家康が共に聚楽第の座敷や台所まで隅々まで見物
- 7月8日 曲直瀬道三邸で秀長と家康が饗宴に出席
- 7月15日 秀長の主催による茶の湯
- 7月20日 聚楽第で秀吉が鮭を振る舞うので秀長と家康が揃って相伴
- 7月29日 京から郡山を訪れる家康を秀長が木津まで出迎えて奈良で遊ぶ
- 8月2日 京に帰る家康を秀長が笠置まで見送り
6. 秀長は家康のカウンターパートだった
秀長と家康は朝廷から正三位に叙せられた時期と、従二位権大納言に叙せられた日付が全く同じです。
これは豊臣秀吉の配慮であり、徳川家康の立場は豊臣政権の「宰相」である豊臣秀長と同列かもしくは少し上であると世間に示す意向があったと考えられます。全国の諸大名が豊臣秀吉の前で臣従を誓うときの席次は常に家康が1番で、秀長が2番という順番であったと言われています。
これらのことから徳川家康が徳川家の代表として豊臣家と何か実務的な交渉をするときのカウンターパートは、秀吉ではなく秀長であったことがうかがえます。
7. 秀長は家康と「薬友だち」だった
1590（天正18）年の小田原征伐のとき、豊臣秀長は病気のため小田原に参陣することができませんでした。このとき徳川家康から豊臣秀長に対して病気を見舞う手紙がたびたび出されています。
家康からの手紙に対して秀長は返礼の意味で、返信と合わせて家臣の桑山重晴が手配した薬を送っていたと言われています。
「どうする家康」でも徳川家康の薬好きのシーンがたびたび描写されています。豊臣秀長は家康の薬好きを知っており、2人は「薬友だち」でもあったと考えられます。
8. 秀長が長生きしていたら家康の天下取りはあったか？
豊臣秀長と徳川家康のエピソードで最も関心があることと言えば、「秀長が長生きをしていたら家康の天下はあったか？」ということでしょう。
歴史に”if”はありませんので、豊臣秀長が51才よりも長生きしたとしても、徳川家康が天下を取っていたかもしれません。ただ豊臣秀長は、豊臣秀吉の下にあっては石田三成さえも抑えることこともできた「豊臣政権の宰相」です。
そのことを考えると、1600（慶長5）年 に起こった関ヶ原の戦いは起こらなかったか、もしくはもっと後になって起こった戦だったのかもしれないでしょう。
豊臣秀長とは 関連記事
豊臣秀長 何をした人
豊臣秀長 逸話
豊臣秀長 死因
豊臣秀長 生きていたら
豊臣秀長 年表
豊臣秀長 領地
豊臣秀長 ケチ
豊臣秀長の幼名・本名
ポチップ
