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智雲院とは慈雲院のこと 豊臣兄弟! 慶(吉岡里帆)について

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豊臣秀長の正妻の名前は智雲院ではなく慈雲院

大河ドラマ「豊臣兄弟!」の慶(慈雲院)について

2026年のNHK大河ドラマ「豊臣兄弟!」の主人公は、仲野太賀さん扮する「小一郎」こと豊臣秀長(1540~1591年)です。その「豊臣兄弟!」では、豊臣秀長の妻として吉岡里帆さん扮する慶(ちか)が登場することが明らかにされています。

慶とはのちに豊臣秀長の正妻(正室)として、慈雲院(じういん)と称される女性のことです。

「智雲院」の出所は「森家先代実録」

NHKは「豊臣兄弟!」の慶とは「慈雲院」であるとしていますが、一部では「慈雲院」ではなく、「智雲院(ちうんいん)」として名前が伝わっています。

この「智雲院」と言う名前が伝えられている大元は、江戸時代中期から幕末期まで存在した播磨国・赤穂藩の森家が編集した「森家先代実録」によるものです。

そのことをNHK大河ドラマ「豊臣兄弟!」の時代考証を担当している黒田基樹さんは、著書の「羽柴秀吉とその一族 秀吉の出自から秀長の家族まで (角川選書)」でこのように指摘されています。

秀長の正妻は、法号を慈雲院殿といった人物である。なお法号について、「森家先代実録」(刊本九九頁)には「智雲院」と記されていて、そのためその表記で示される場合もみられているが、正しくは慈雲院殿である。

黒田 基樹. 羽柴秀吉とその一族 秀吉の出自から秀長の家族まで (角川選書) (Function). Kindle Edition. No.2675

豊臣秀長の正妻の名前を「慈雲院」とする根拠

「誓願寺奉加帳」の「大和様慈雲院殿」と言う名前

黒田基樹さんは、豊臣秀長の正妻の名前を「智雲院」ではなく、「慈雲院」としている根拠を、1591(天正19)年から1592(文禄元)年の間に作成された「誓願寺奉加帳(誓願寺文書の研究)」にあるとしています。

誓願寺奉加帳(誓願寺文書の研究)」には豊臣秀長が1591(天正19)年に亡くなったのち、秀長の菩提を弔うべき人物が柱を奉納していることが記述されていて、その筆頭人物として「大和様慈雲院殿」という名前が挙げられています。

この「大和様慈雲院殿」とは亡き豊臣秀長の正妻であり、「豊臣兄弟!」で言うところの慶に相当する女性ということになります。

ちなみに戦国時代の寺といえば、神仏を祀る宗教施設であっただけでなく、今でいう大学や大学院に相当する高等教育機関でもありました。身分の高い武将の子供たちは寺の学僧たちから学問を学ぶので、寺の奉加帳の字が間違っているということは考えにくいことです。

加えて「寺に柱を奉納する」ということは、現代風に言えば寺に対して一種のスポンサーをすることです。大企業や一流企業にスポンサーしてもらった大学や大学院が、スポンサーの名前を書き間違えるでしょうか?可能性としては極めて低いでしょう。

「駒井日記」の「ちういん様」について

このように黒田基樹さんは16世紀後半に存在した記録でもって、豊臣秀長の正妻の名前は「智雲院」ではなく「慈雲院」であったとしています。

現代において豊臣秀長の正妻の名前を「慈雲院」ではなく、「智雲院」としている出所の1つは、1996(平成8)年に新人物往来社から出版された「豊臣秀長のすべて」であると考えられます。

「豊臣秀長のすべて」の220ページを見ると、豊臣秀長の妻妾の1人として「駒井日記」の記録から「ちうんいん様」と言う記述があることが指摘され、そこから上述した「森家先代実録」で挙げられている「智雲院」と名前と一致するとしています。

「誓願寺奉加帳」は豊臣秀長の正妻が生きていたときの記録

しかし、「誓願寺奉加帳」は豊臣秀長の正妻が、誓願寺に柱を奉納した時に作成されたもので、「森家先代実録」は江戸時代中期から後期にかけて編纂されています。「いつ記録されたか?」と言うことを比較すると、やはり「誓願寺奉加帳」の方が正確であると言わざるを得ません。

これらのことから、豊臣秀長の正妻であった女性の名前は、NHKが吉岡里帆さん扮する慶はのちの慈雲院であるとしているように、「智雲院」ではなく「慈雲院」としている方が正しいと考えられるでしょう。

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