べらぼう 11話 富本、仁義の馬面 あらすじ(3月16日放送)
べらぼう 10話までのあらすじ
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富本午之助を吉原の祭り「俄」の目玉に
べらぼう 10話で蔦谷重三郎は、錦絵本「青楼美人合姿鏡(せいろうびじんあわせすがたかがみ)」を、田沼意次(渡辺謙)を通して十代将軍・徳川家治(眞島秀和)に献上することに成功します。
しかし、その値段は銀二十匁(約9万4,000円)と高すぎるせいでさっぱり売れず、本の購入者が吉原の遊客となることはありませんでした。
そこで吉原の親父たちは、8月の1ヶ月間に行われる吉原の祭りである「俄(にわか)」で客よせをしようと考えます。大黒屋のりつ(安達祐実)はその目玉には富本節の太夫である、富本午之助(とみもとうまのすけ)を招きたいと言い出します。
「吉原嫌い」の富本午之助は出演を拒否
さっそく蔦谷重三郎は、りつと義兄・次郎兵衛とともに「馬面太夫」こと富本午之助が出る芝居町の芝居小屋に出かけて、吉原の「俄」に出てもらえないかと出演交渉をします。
しかし午之助の答えは「吉原は好かない」で、「俄」への出演をきっぱりと拒否。そこで蔦谷重三郎は一計を案じて、富本午之助と、仲の良い歌舞伎役者である門之助を料理茶屋に呼び出します。
べらぼう 11話 ネタバレ
富本午之助は「四民」以外の身分
富本午之助が「吉原嫌い」な理由は、若いころに吉原の中見世である「若木屋」に遊びに行ったとき、「役者者(やくしゃもの)」として追い払われた経験にありました。
江戸時代は「士農工商」という身分制度が人々の前に立ちはだかる世の中でしたが、歌舞伎役者や浄瑠璃の太夫などのいわゆる「河原者」と呼ばれる芸能に携わる人々は「四民」の外。
つまり富本午之助は「士農工商」の中で最も低いとされた「商人」よりも低い身分とされていました。
もちろん現代の日本ではこうした身分制度は日本国憲法第14条の「法の下の平等」で否定されています。
富本午之助が「吉原嫌い」な理由
吉原では建前上、四民の外にある歌舞伎役者や浄瑠璃の太夫を見世に入れて女郎と遊ばせてはいけないという決まりになっていたそうです。
べらぼう11話によると、役者や太夫を吉原に入れてはいけないという決まりは、当時かなり緩くなっていました。
しかし富本午之助と門之助が入った「若木屋」ではこの決まりが厳格に適用されてしまい、それ以来、富本午之助は吉原のことを嫌いになってしまったという設定になっています。
「富本正本」の出版を手がける蔦屋重三郎
この吉原嫌いの午之助を接待して吉原の「俄」に出演してもらうのが、蔦屋重三郎の役割です。
しかし、べらぼう 11話は、「蔦屋重三郎が女郎たちと組んで午之助を接待する」→「いい気持ちにさせて吉原に連れてくる」というだけの単純なストーリーではありません。
「江戸のメディア王」らしく、ちゃんと出版物の話も絡んでいます。それが「富本正本」です。
「富本正本」とは?
「富本正本」とは浄瑠璃の一派である「富本流」の正本(詞章に節付を施した冊子)のことで、現代風にいうと「富本の楽譜」です。
蔦谷重三郎は女郎たちを使った接待の際に、この「富本正本」の「直伝」つまり「富本のお師匠さんが認めた楽譜」を「耕書堂」の名前で出版させてほしいとお願いをします。
「直伝」の「富本正本」は確実に売れる商品
「富本正本」は楽譜の本だけあって、必ずしも一般受けするような本ではありません。しかし当時、浄瑠璃の別の一派である常磐津は不振であり、富本の方に人気が集まっていました。
富本を習いたいと考える弟子たちが増えている時期であり、その中でも「直伝」の「富本正本」は弟子の数だけ確実に売れるという、「ミリオンセラーにはならなくても売れ残ることもないリスクの低い商品」だったのです。
リスクの低い商売をする蔦屋重三郎
次回のべらぼう 12話では、吉原の大門前にある「耕書堂」の店先には客がそれほど多くないにも関わらず、「富本正本」は確実に捌ける商品として紹介されるシーンがあります。
このように蔦屋重三郎は、遊女評判記「一目千本」・吉原細見「籬の花」・錦絵本「青楼美人姿合鏡」の出版で見せたように、手堅いビジネスの才覚を「富本正本」の発行でも見せるのです。
なお、べらぼうのあらすじとネタバレ初回から一気に読みたいという方は、「2025年大河ドラマべらぼうの全話あらすじとネタバレ一覧」という記事の、「べらぼう 各話あらすじとネタバレ解説」という項目を参考にしてください。
べらぼう 11話 用語
大河ドラマ「べらぼう」11話に登場する用語の用語集です。ドラマを視聴する際の参考にしてください。
- 俄(にわか)
- 正本(しょうほん)
- 馬面太夫(うまづらだゆう)
- 富本節(とみもとぶし)
- 太夫(たゆう)
- 浄瑠璃(じょうるり)
- 常磐津(ときわづ)
- 河東(かとう)
- 直伝(じきでん)
- 出語り(でがたり)
- 稲荷町(いなりまち)
- 四民(しみん)
- 当道座(とうどうざ)
- 二上がり(にあがり)
- 富本豊前太夫(とみもとぶぜんだゆう)
そのほかの分からない単語につきましては、五十音順になった「べらぼう 用語集」の記事を参考にしてください。
俄(にわか)
「俄」には「いきなり」と言う意味があり即興で歌舞伎の真似事を始めること。吉原の「紋日」の1つで、8月1日からの1ヶ月間に行われました。
正本(しょうほん)
詞章に節付を施した冊子のこと。
馬面太夫(うまづらだゆう)
富本午之助(富本豊前太夫)のことで、面長な顔立ちからこのように呼ばれています。
富本節(とみもとぶし)
三味線音楽のひとつで、浄瑠璃の一種。初代富本豊前掾(とみもとぶぜんのじょう)が1748(延享5/寛延元)年に創始したもの。
太夫(たゆう)
能・歌舞伎(かぶき)・浄瑠璃(じょうるり)等の芸人の、上級のもの。
浄瑠璃(じょうるり)
三味線を伴奏にして太夫が詞章を語る劇音楽で、劇中人物のセリフや仕草などの演技描写が入るため、「歌う」よりも「語る」要素が強いとされています。
常磐津(ときわづ)
浄瑠璃の一派。常磐津文字太夫(もじだゆう)が創始したとされています。
河東(かとう)
浄瑠璃の一派。江戸半太夫(半太夫節の創始者)の門下である江戸太夫河東が創始したとされています。
直伝(じきでん)
浄瑠璃の本元の太夫の許しを得て出版した正本のこと。
出語り(でがたり)
浄瑠璃の太夫が三味線弾きともに舞台上に出て、観客に姿を見せながら弾き語りをすること。
稲荷町(いなりまち)
下っ端役者や大根役者のこと。
四民(しみん)
江戸幕府が定めた身分制度である「士農工商」のこと。
当道座(とうどうざ)
中世から近世にかけて存在した男性盲人の自治的な職能互助組織。盲人による琵琶、鍼灸、導引、箏曲、三弦などの団体を指します。
二上がり(にあがり)
三味線の調弦法の1つ。本調子を基準にして第2弦を1全音(長2度)高くしたものことを指します。
富本豊前太夫(とみもとぶぜんだゆう)
富本節の太夫の名跡。
べらぼう 11話 主な登場人物・キャスト・役柄
ナレーション・語り
役名 | キャスト | 役柄 |
---|---|---|
九郎助稲荷 (くろすけいなり) | 綾瀬はるか | 吉原の南東の隅にあるお稲荷さん |
板元・出版関係者
役名 | キャスト | 役柄 |
---|---|---|
蔦屋重三郎 (つたやじゅうざぶろう) | 横浜流星 | 吉原大門前にある耕書堂の主人。 富本正本の出版を企画 |
留四郎 (とめしろう) | 水沢林太郎 | 駿河屋の拾い子。耕書堂を手伝っている |
鱗形屋孫兵衛 (うろこがたやまごべえ) | 片岡愛之助 | 江戸の地本問屋「鱗形屋」の主人。 富本正本の出版を企画 |
万次郎 (まんじろう) | – | 鱗形屋孫兵衛の次男 |
倉橋格 (くらはしいたる) | – | 駿河小島藩藩士。鱗形屋に黄表紙の原稿を渡す |
吉原の親父たちとその関係者
役名 | キャスト | 役柄 |
---|---|---|
次郎兵衛 (じろべえ) | 中村蒼 | 引手茶屋「蔦屋」の主人。駿河屋市右衛門の実の息子。 |
駿河屋市右衛門 (するがやいちえもん) | 高橋克実 | 引手茶屋「駿河屋」の主人。蔦屋重三郎の養父 |
りつ (りつ) | 安達祐実 | 女郎屋「大黒屋」の女将 |
大文字屋市兵衛 (だいもんじやいちべえ) | 伊藤淳史 | 女郎屋「大文字屋」の主人 |
若木屋 (わかぎや) | – | 女郎屋「若木屋」の主人。中見世 |
志げ (しげ) | 山村紅葉 | 大文字屋の遣り手 |
吉原の女郎たち
江戸市中の人たち
役名 | キャスト | 役柄 |
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お瀬以 (おせい) | 小芝風花 | 鳥山検校の妻 |
小田新之助 (おだしんのすけ) | 井之脇海 | 平賀源内の弟子。うつせみのことを想っている |
鳥山検校 (とりやまけんぎょう) | 市原隼人 | 当道座を作ることを許された高利貸しの大金持ち |
平沢常富 (ひらさわつねまさ) | 尾美としのり | 秋田藩士の江戸留守居役。吉原マニア。のちの朋誠堂喜三二 |
富本午之助 (とみもとうまのすけ) | – | 富本節の太夫で「馬面太夫」と呼ばれる。のちに「富本豊前太夫」を襲名 |
門之助 (もんのすけ) | – | 歌舞伎の若手役者。「二代目 市川門之助」 |
名見崎徳治 (なみざきとくじ) | – | 富本節の三味線方 |
べらぼう 11話 蔦屋重三郎 何才?
べらぼう 11話の時代は江戸時代中期の1776(安永5)年のお話です。
このとき蔦屋重三郎は27才、田沼意次は58才、田安賢丸(のちの松平定信)は18才と言う設定です。「べらぼう 年表」の記事と合わせてご確認下さい。