木下小一郎の「木下」はどこから来ているのか?
木下小一郎の「木下」は木下藤吉郎から
2026年のNHK大河ドラマ「豊臣兄弟!」の主人公・豊臣秀長(仲野太賀)は、織田信長の直臣となってから(1550年代後半から1560年代前半の間)、1578(天正6)年10月までは、「木下小一郎(きのしたこいちろう)」を名乗っていたと考えられています(より正確には「木下小一郎長秀」)。
「木下」という苗字は兄が木下藤吉郎(のちの豊臣秀吉)が名乗っていたことに基づくもので、名の「小一郎」とは仮名(けみょう)、長秀は実名に当たります。
ちなみに「長秀」は誤りで「秀長」ではないかと感じられる方もいらっしゃるかもしれません。ですが実名の「長秀」は信長の「長」と秀吉の「秀」から取られたものです。
信長が主君の立場にありますから、「秀」よりも「長」の字を優先して「長秀」と名乗っていたのでしょう。
「豊臣兄弟!」の「小一郎」という名前について
2024年3月12日にNHK大河ドラマ「豊臣兄弟!」が制作発表されたときには、主役の仲野太賀さんは「尾張中村の貧しい農家に生まれた小一郎」という役柄であると明らかにされました。
「豊臣兄弟!」における小一郎という役名は、「木下小一郎」の「小一郎」から取られたものでしょう。
「木下」の苗字はどこから来たのか?
それでは兄・木下藤吉郎秀吉の「木下」という苗字はどこから来ているのでしょうか?
上述した「豊臣兄弟!」制作発表の記事によると、あらすじとして「ある日、音信不通の兄・藤吉郎(のちの豊臣秀吉)が意気揚々と姿を見せる。」とあります。
意気揚々と実家に戻ってくるということは、武士らしく「木下藤吉郎」と苗字がついた名乗りをするようになったのでしょうか。
「羽柴秀吉とその一族 秀吉の出自から秀長の家族まで (角川選書)」によると、秀吉の父は織田家の在郷被官(半農半兵の家来)であったものの秀吉が織田信長に仕官したころには没落しており、すでに苗字を名乗ることができる身分ではなくなっていたと考えられています。
そうすると藤吉郎は誰かから苗字を授けられたことになっています。
木下藤吉郎の「木下」は木下雅楽助から
1996年のNHK大河ドラマ「秀吉」では、藤吉郎は織田信長の供をしているときに大きな木の下に行き当たり、そこから藤吉郎は主君から「木下」という苗字を授けられたいう設定になっています。
しかし「豊臣兄弟!」で時代考証をされている黒田基樹さんの「羽柴秀吉とその一族 秀吉の出自から秀長の家族まで (角川選書)」によると藤吉郎が「木下」という苗字を名乗った理由を信長からもらったという考え方には否定的です。
その理由は、藤吉郎が足軽として織田家に仕えたときには、その立場は直臣というより陪臣(家臣の家臣)に近かったと考えられるためです。
黒田基樹さんは、「信長公記」に木下雅楽助という織田家の家臣が登場し、さらに「明智軍記」では1562(永禄5)年に藤吉郎が信長から知行30貫を受け取るようになった時に藤吉郎の寄親(直属の上司)がその木下雅楽助であったことから、「木下」という苗字が授けられた可能性が高いと指摘しています。
そもそも木下雅楽助は、信長家臣としては決して著名な人物ではない。「信長公記」には二か所にしかみえていないし、「太閤記」にはみえていない。そのようにほとんど知られていない人物を、ここに登場させ、それから苗字を与えられた、とする内容は、創作できないことと思われる。それだけにこの内容は、真実味があるととらえられる。さらにあとで触れるが、木下雅楽助とは、別のつながりもみられた。秀吉が木下苗字を称したのは、寄親であった木下雅楽助から与えられた、と考えてよいだろう。
黒田 基樹. 羽柴秀吉とその一族 秀吉の出自から秀長の家族まで (角川選書) (pp. 95-96). (Function). Kindle Edition.
木下藤吉郎の「木下」苗字を名乗った同時代の人たち
ちなみに木下藤吉郎の苗字に由来する「木下」を名乗った同時代の主な人たちには、こんな人々がいます。
| 名前 | 秀吉との関係 | 説明 |
|---|---|---|
| 木下小一郎長秀 (きのしたこいちろうながひで) | 弟 | 1578(天正6)年10月以降に「木下」から「羽柴」に苗字を変更し、「羽柴小一郎長秀」を名乗る |
| 木下与一郎 (きのしたよいちろう) | 甥 | 小一郎の長男。羽柴与一郎とも呼ばれている |
| 木下家定 (きのしたいえさだ) | 義兄 | ねね(寧々)の実の兄。木下秀俊(のちの小早川秀秋)の実父 |
| 木下秀俊 (きのしたひでとし) | 養子 | 木下家定の五男。のちの小早川秀秋 |
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