丸屋小兵衛(丸小)とは日本橋通油町の地本問屋
丸屋小兵衛から株仲間の権利を購入した蔦屋重三郎
NHKの2025年大河ドラマ「べらぼう」の17話「乱れ咲き往来の桜」で登場する、「丸小(まるこ)」と呼ばれる、丸屋小兵衛(まるやこへえ)とは、日本橋通油町にある地本問屋の主人のことす。
蔦屋重三郎は、この丸屋小兵衛が持つ株仲間の権利・土地・建物を購入することによって、1783(天明3)年9月に日本橋通油町に地本問屋としての「耕書堂」を正式に開業することになります。
これにより蔦屋重三郎は本の小売りに加えて、自分が出版した本を吉原遊廓内だけではなく、江戸市中に堂々と流通させられるようになりました。
吉原を拠点として出版界にデビューした重三郎は、リスクの少ないジャンルの出版により着々と経営基盤を固めた。そして天明三年九月に、日本橋の通油町にあった地本問屋・丸屋小兵衛の店舗とその蔵を買い取り、新たな拠点とした。 日本橋への移転は、単に拠点を移すことにとどまらなかった。丸屋が持っていた地本問屋の株を掌中に収めたことも意味した。
安藤 優一郎. 蔦屋重三郎と田沼時代の謎 (PHP新書) (p. 40). (Function). Kindle Edition.
丸屋小兵衛(丸小)は6話にも「登場」
丸屋小兵衛の話題自体は17話で初めて登場します。このときは「往来物」という現代のテキストブック・教科書のような読み物を多く手掛けているという設定です。
しかし大河ドラマ「べらぼう」の作中では、6話「鱗剥がれた『節用集』」において、蔦重と鱗形屋孫兵衛(片岡愛之助)との会話の中で登場し、丸小と青本の関係について言及しています。
店頭に戻ってくると、蔦重は鱗形屋の前に持ってきた青本を並べた。 「鱗の旦那様は青本もずいぶん出されてましたよね。火事の前は」 「まぁな。青本といえば、うちか、丸小か」 丸小こと丸屋小兵衛も地本問屋である。
森下 佳子; 豊田 美加. べらぼう~蔦重栄華乃夢噺~ 一 (p. 143).(Function). Kindle Edition.
どうやら丸屋小兵衛は、草双紙のうち青本を得意とする地本問屋でもあるようです。
蔦重に往来物のシェアを奪われた丸小
ただ、丸小の経営にとって致命的だったのは、青本よりも往来物だったようです。
べらぼう 17話で蔦重は「往来物」の執筆者や流通先を江戸市中ではなく、越後国(現在の新潟県)・新潟の農村地域や、信濃国(現在の長野県)の地方都市で確保することから始めて、江戸における往来物の販売シェアを自分が営む「耕書堂」に取り込んでいくことに成功します。
逆に蔦重によって往来物のシェアを奪われ窮地に追い込まれた丸小は、店の売却話が取り沙汰されるようになります(べらぼう23話・24話)。
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