結論から言うと、堀池頼昌(ほりいけよりまさ)は実在した人物である可能性は極めて低く、大河ドラマ「豊臣兄弟!」の創作キャラクターである可能性が高いでしょう。
ただし完全な架空ではなく、江戸時代中期の軍記物「美濃国諸旧記」に登場する在地武士「堀池家」がモデルになっていると考えられます。
つまり堀池頼昌は「史料に断片的に残る武士像をもとに再構成された人物」でしょう。
本記事では、史料・身分構造・NHK設定をもとに、頼昌の正体と物語上の役割を解説します。
なお慶の結末・内通疑惑の全体は以下の記事を参考にしてください。
なお、堀池頼昌の妻である堀池絹については、以下の記事で詳しく解説しています。
→ 堀池絹とは誰?
堀池頼昌は実在する?結論【先に知りたい人向け】
結論から言うと、
- 戦国時代に「堀池家」は存在した可能性がある
- しかし「堀池頼昌」という人物の実在性は極めて低い
です。よって奥田瑛二さんが演じる「豊臣兄弟!」の堀池頼昌は、史料に登場する在地武士をもとにした創作キャラクターと考えるのが最も自然です。
堀池頼昌は実在する?史実との関係
「美濃国諸旧記」に見える堀池家
堀池家は、江戸時代中期に編纂された軍記物である「美濃国諸旧記」巻之六に登場します。
扨光親代に、揖斐の山下三輪村に要害を構へ、家臣の出頭堀池備中守氏兼・大西源吾を守護代として、光親は、大桑に出仕なり。
「美濃国諸旧記」巻之六 ウィキソース
この記述から堀池家について分かるのは以下の3点です。
- 堀池備中守氏兼が「家臣」として登場
- 備中守という官途名を持つ武士
- 美濃国揖斐(現在の岐阜県西部)に関係
身分と立場(どのクラスの武士か)
この記述を踏まえると、堀池家とは大名や国人衆ではなく、その配下に属する地侍・土豪と呼ばれた在地武士と考えられます。
大河ドラマ「豊臣兄弟!」に登場する美濃国の武士たちと堀池家の力関係を比較すると、
- 斎藤龍興 → 大名(現代の都道府県知事クラス)
- 安藤守就 → 国人(現代の市長クラス)
- 堀池家 → 地侍・土豪(現代の町長・村長クラス)
という関係にあった可能性が高いでしょう。
このことから堀池家は、美濃国にいたより上層の武士たちから「支配される側の武士」だったと考えられます。
なぜ「堀池頼昌」は創作上の架空人物といえるのか?
ここからが重要です。
「美濃国諸旧記」に出てくるのは、「堀池備中守氏兼」であり、
- 頼昌という名前は出てこない
- 系譜も不明
- 慶(慈雲院)との関係も史料にない
つまり「豊臣兄弟!」の堀池頼昌という人物は、少なくとも「美濃国諸旧記」からは復元できません。そのためNHKの大河ドラマ制作関係者が「在地武士の典型像」として創作した人物である解釈できる余地が生まれます。
大河ドラマ「豊臣兄弟!」の公式設定から見る堀池頼昌の人物像
堀池頼昌は、NHKによって以下の役柄を与えられています。
美濃・斎藤家に仕えていた慶の亡夫の父。安藤守就の離反で斎藤氏が敗北し、堀池家は没落。現在は百姓として生活。
この設定は、
- 美濃国の在地武士(堀池家)
- 斎藤家家臣
- 没落して帰農
という流れで、史料的背景と非常に整合的です。
堀池頼昌はなぜ帰農したのか?(ドラマ設定のリアリティ)
西美濃三人衆と比較する待遇の違い
「豊臣兄弟!」の第9話「竹中半兵衛という男」のお話では、織田信長(小栗旬)が稲葉山城を攻略し、美濃国の戦国大名であった斎藤龍興(濱田龍臣)は越前国に逃亡します。
その際「西美濃三人衆」と呼ばれ、斎藤龍興の重臣として支えていた、安藤守就(田中哲司)・稲葉良通(嶋尾康史)・氏家直元(河内大和)は織田家への帰参が許されました。
にも関わらず同じく斎藤家に仕えていた堀池家は没落。堀池頼昌は帰農して、妻・堀池絹(麻生祐未)とともに百姓を営んでいるという状態です。
「選ばれなかった武士」という立場
「西美濃三人衆」と堀池家の間に横たわる待遇の違いは、ひとえに元の身分と、織田家から見た政治的利用価値の差であると考えられるでしょう。
堀池頼昌は
- 登用されるほどの格ではない
- 戦後に切り捨てられた側
つまり「歴史の勝者から見た敗者の立場」として描かれている設定です。
慶との関係|なぜ内通疑惑につながるのか?
義父として慶の行動に影響を与える存在
堀池頼昌は、慶の元夫の父であり、慶にとっては「前の婚家(元の家)」における義父にあたります。
戦国時代において女性は婚姻によって家に属する存在であるため、慶は再婚後であっても、完全に堀池家との関係を断つことはできません。
その結果、慶は
- 現在の所属:羽柴小一郎長秀の家
- 過去の所属:堀池家
という二重の帰属関係を持つことになります。この「二重の所属」が、慶の行動を曖昧にし、周囲から疑念を抱かせる原因になるのでしょう。
堀池頼昌の居住地が慶の行動と直接結びつく
大河ドラマ「豊臣兄弟!」の設定では、堀池頼昌は、美濃の斎藤家が没落した後、農村で百姓として生活。一方で慶は、人目を避けるようにその村へ通っています。
このとき周囲の人物から見ると、
- 慶が特定の村へ通っている
- その村には旧勢力の関係者(頼昌)がいる
という状況になります。そのため、慶の行動は「旧勢力との接触」と解釈されやすくなります。
内通疑惑は「過去・現在・秘密」の重なりで成立する
慶の内通疑惑は、単なる誤解ではなく、次の3つの要素が重なって生まれます。
- 過去:堀池家(旧主家とのつながり)
- 現在:秀長の妻としての立場
- 秘密:子供・与一郎の存在
慶が村に通う理由が説明されないまま曖昧さが残ることで、「敵対勢力と通じているのではないか」という疑念が合理的に成立します。
つまり堀池頼昌は、慶の過去を現実に引き戻し、疑惑を成立させる装置として機能している人物です。
そのことは「豊臣兄弟!」の第19話のサブタイトルである「過去からの刺客」にも反映されているのではないでしょうか。
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堀池絹を詳しく知りたい方へ
「豊臣兄弟!」に登場する堀池絹(ほりいけきぬ)とは、堀池頼昌の妻で、夫ともに近江と美濃の国境にある宝久寺村で百姓暮らしをしていると設定です。
その堀池絹の人物像については下記の記事において詳しく説明しています。
→ 堀池絹とは誰?
堀池頼昌 参考文献
なお今回の記事を書くにあたって参考文献とした書籍は以下の通りです。
